公開:2021年8月21日
鳥の渡りに風が関連してると思ってるバーダーは多いかと思います。
当然だよね!
今年になって、風の動きが見える「earth :: 地球の風、天気、海の状況地図」というサイトを見つけ、使えないかなぁ〜と考えてました。既にご存知の方もいらっしゃるかと思いますが...
2021年5月17日より始まったNHKの朝ドラ、「おかえりモネ」に同じような画面が出て来ます。
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「おかえりモネ(9)」に加筆 |
これは「おかえりモネ(9)」の一場面です。注目は、赤丸のモニター画面。実際は動いており風の状況(風向・風速)を表しています。「おかえりモネ(9)」のものは、気象予報会社のものなので、多少違うかもしれません。
「earth :: 地球の風、天気、海の状況地図」(以降、「earth :: 地球の風」)
は風、海流、波浪、粒子状物質などの動きが地球規模で見れます。過去の情報や将来の予測も見れます。
風の表示は、いろいろな高度(正確には気圧)のものがあります。地上、1000hPa(〜100m)、850hPa(〜1,500m)、700hPa(〜3,500m)などです。( )内は高度です。
少し考え方が面倒ですが、風向・風速の表示の基準は、それぞれの気圧のものです。一定の高度の気圧は、高気圧や低気圧で変わるので、( )内は、高度 約〜mと見るのが妥当かと思います。腕時計に高度を測れるものがありますが、気圧の変化から高度を割り出してます。考え方は同じです。
スーパーコンピューターが計算しているそうです。風の更新は3時間おきです(近々のものは1時間のようです)。風速はいろいろな単位で表示可能です。ちなみに 30m/s⇄108km/h です。
詳しくは
「earthについて :: 地球の風、天気、海の状況地図」
をご覧ください。
dataは
<天気予報データ>
GFS (Global Forecast System)
EMC / NCEP / NWS / NOAA
を元にしてるとのことです。
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私がバードウォッチングで行った「粟国島BW」と「伊良部島・下地島・宮古島BW」の鳥の渡りの状況を「earth :: 地球の風」の当時のものを利用して大雑把ですが検証して見ようと思います。
(1)粟国島BWについて
当ブログ
に掲載しています。日毎の種の記録を掲載してないのですが、FieldNoteに記録があったのでそれを参考にしました。
鳥の状況は
3月31日までは、
留鳥以外ヤツガシラが多かった程度で、ギンムクドリ、アカハラ、シロハラ、ジョウビタキ。ツルシギ、ムナグロなどでした。シギチは種類も数も少なかったです。
4月1日からは、
クロウタドリ、ミヤマヒタキ、キビタキ、オオルリ、ルリビタキ、ミヤマホオジロ、アトリ、ホシムクドリ、ツバメチドリ、オオチドリなどが増えました。シギチは種類も数も多くなりました。
さて、何が起こっていたのか?「earth :: 地球の風」の風の情報を見ていこうと思います。
小鳥類が多いので、1000hPaと850hPa(いずれも12時のものです)で見てみます。
左が1000hPa(〜約100m)、右が850hPa(〜約1,500m)
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※ 静止画にすると風向がわかりにくい為、橙色矢印を追加。緑○が粟国島。 |
左が1000hPa(〜約100m)、右が850hPa(〜約1,500m)
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※ 静止画にすると風向がわかりにくい為、橙色矢印を追加。緑○が粟国島。 |
<風>
850hPaで3月31日〜4月1日を詳しく見ると、
・29日以前は南からの風です。フィリピン方面から台湾方面に安定して吹いています。
・台湾方面から粟国島への風は30日から弱く吹いており、3月31日 3:00〜18:00まで強く吹いていました。
・中国大陸方面からの風は3月31日 18:00から吹いてきましたが不安定です。安定するのは4月1日 3:00からです。
<鳥の確認など>
4月1日になって鳥の種類も数も増えました。ミヤマヒタキ(Ferruginous Flycatcher)とオオチドリ(Oriental Plover)で見てみましょう。
・ミヤマヒタキ(1羽)の最初の確認(撮影時刻)は4月1日 9:57でした。前日はいなかった。
・オオチドリ(6羽)の最初の確認(撮影時刻)は4月1日 16:20でした。前日はいなかった。
・その他ルリビタキ、キビタキ、アトリ、ミヤマホオジロなどを7:50〜10:55で確認(撮影時刻)しています。前日はいなかった。
・ミヤマヒタキの分布:繁殖地としては台湾高地、中国大陸内陸部などです。越冬地としてはフィリピン、ベトナムなど東南アジアの一部となっています。「Birds of East Asia 2009 Mark Brazil」よると中国大陸沿岸部も越冬地となっています。
・オオチドリの分布:オーストラリアなどで越冬しシベリアあたりで繁殖しています。中国大陸沿岸、台湾、日本(与那国島に多い)は通過地域です。
・この時期(3月下旬)はいずれも移動時期(南から北へ)です。
・ミヤマヒタキ、オオチドリの飛翔力がどの程度であるかですが、オオチドリは中型の鳥でオーストラリアの方から飛んで来るので比較的飛翔力はあると思えます。ミヤマヒタキは小鳥なのでどの程度かは不明ですが、ルリビタキ、キビタキ、アトリ、ミヤマホオジロなども同時刻に確認しているので一緒に渡って来て、同様の飛翔力はあるのかと思います。
<距離>
・台湾と粟国島は約600km。途中、島が点在する。
・中国大陸沿岸と粟国島は最短で約700km。最短部に島は無い。
・台湾とフィリピンは約400km。途中、島が点在する。
<検証>
どこからやって来たのかを検証します。台湾か中国大陸かです。
台湾方面からだとすると風は3月31日 3:00頃から18:00頃まで台湾方面から強く吹いてました。4月1日 7:50〜10:55で前日に居なかった小鳥類を確認しています。
3月31日の状況を見ると前線がある為か1000hPa、850hPaで多少状況が違っています。850hPaで西の方向から強風(46km/h)が吹いてます。この日は良い天気で暑かったです。風も強かったです。サトウキビの刈り取りをやっていた人から、よく冷えたお茶(缶)を頂いた事を記録してました。
台湾までは約600km、この風速なら14時間も飛べば台湾から直接飛んで来れます。まぁ小鳥なのでどの程度長時間飛べるかは不明。途中、島もあるので、経由を考えるのが妥当かと思うが確証は無い。
中国大陸方面からだとすると風が安定するのは4月1日 3:00頃からです。風向からすると700km以上となります。私達が確認するまでは約5時間です。飛行速度は140km/h(風速は早い所で50km/h)となります。現実的なものとは思えません。
4月1日、現地では北風が吹いて寒かったです(1000hPaで40km/h)。鳥が増えたのは、今までこの北風の影響かと勘違いしていたようです。
<検証結果>
・今回、風向は850hPa(〜約1,500m)が合致したようだ。
・ミヤマヒタキ、オオチドリ、その他小鳥類は台湾からと考えられる。
・今回は中国大陸からのものとは考えにくい。
・台湾方面からの風は3月31日 3:00〜18:00だけと短かかった。
(2)伊良部島BWについて
当ブログ
に掲載しています。もちろんサシバ(Grey-Faced Buzzard)です。
データは、沖縄県自然保護課と宮古野鳥の会によって調査されたものを参考にしました。
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「令和2年度サシバ飛来数調査結果」より抜粋 |
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「令和2年度サシバ飛来数調査結果」より抜粋 |
私達は2020年10月10日〜15日に伊良部庁舎の屋上に行き、観察させて頂きました。伊良部島に入って来るサシバは北側からのものは少なく、観察員の方がおっしゃる通り南側から入って来るものが多かったです。いったん付近を通り過ぎて迂回して入って来るようでした。伊良部島は塒として使っています。
・飛行スピード:平均40km
・1日の飛行距離:平均480km
・1日の飛行時間:ノンストップで12時間もあり
・伊良部島からの飛行は台湾方面とフィリピン方面(バタン島)の2つの飛行ルートがある
飛行高度はあまり調べられていないのですが、過去にモーターグライダーでサシバと一緒に飛んだ記録があり、高度300mあたりが多かったようです。
・表示は850hPa(〜約1,500m)のものを使いました(いずれも12時のものです)。
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※ 静止画にすると風向がわかりにくい為、橙色矢印を追加。緑○が伊良部島。 |
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※ 静止画にすると風向がわかりにくい為、橙色矢印を追加。緑○が伊良部島。 |
10月9日に那覇経由、宮古島空港だったのですが、台風が近くにいてひやひやでした。8日〜10日のものにはっきりと台風が出てます。
9日だけ1185羽と比較的多いですが、これは台風の影響で沖縄近辺に留め置かれた個体が渡って来たと思えます。
10日、11日と風の状態が良くても、渡りが少ないのは、台風の影響で本州からの渡りが少なく、沖縄近辺の個体数が少なかった為と思われます。
その後、12日(1720羽)、13日(2530羽)と多くなります。
13日の風速は19km/h、この風向で沖縄から伊良部島に到着したのだろうか?前後の時間を調べてみたのですが、同じような風向でした。風向は朝鮮半島からのものを示唆します。
念のため、700hPa(〜3,500m)を調べてみると、ちょうど南西の風向(沖縄から伊良部島)、風速13km/hと穏やかな風が吹いてました。
以前、私が白樺峠で目撃したもので、鳥らしきゴマ粒のようなものが数百、上空を通過していきました(10倍の双眼鏡使用)。私見で上空2,000〜3,000mかな。多数の人が確認しています。スコープでの観察者はタカだと言ってました。700hPa(〜3,500m)も可能性があるように思えます。
渡りは13日をピークにし、14日〜17日にかけて少なくなっていきます。
沖縄県自然保護課と宮古野鳥の会の報告によると「期間中は台風の影響は小さく、北東よりの風が多く吹きサシバにとって渡り易かったと思われます。」と記述されてるとおり風の状況も良いです。
18日、19日の風向・風速共良い感じですが、渡りは少ないです。本州から沖縄方面の風向も良かったので、サシバの渡りの終了かと思えます。
10月15日の夜明け前、塒をとっていたサシバ(1000羽くらい)が飛び出したのですが、どちらに行ったのでしょう。14日の台湾付近の状況に風向の矢印入れて見ました。北方のものは台北の観音山あたりを、南方のものは台湾最南部の墾丁あたりを感じさせます。いずれも台湾のタカの渡りの注目ポイントです。
風の状況は、ほぼ全日安定的に伊良部島から台湾方向に吹いています。伊良部島から台湾まで約300km、沖縄本島から伊良部島までとほぼ同じです。
今回表示してるもので、フィリピン方面(バタン島)は微妙な風向でした。
この時期の台湾のタカの渡りの数を知りたいものです。さぁ!当たってるかなぁ。
<検証結果>
・台風の影響は大きい。その他の期間中は、穏やかな風が沖縄から伊良部島方面に吹いていた。
・風向は通常850hPa(〜約1,500m)で良いが、700hPa(〜約3,500m)も考慮に入れる場合もありそうだ。
・台湾方面への飛行は台湾北部と南部に分かれている可能性がある。
・今回のものではフィリピン方面(バタン島)は考えにくい。
=========== 後述 ==========
実際にバードウォッチングで行った(1)粟国島、(2)伊良部島で鳥の状況と当時の風の情報で大雑把に検証して見ました。まぁ検証と言っても素人の域は出ませんが...不明確なこともまだまだあります。しかし「earth :: 地球の風」は使えるんじゃないかと思います。見れば見る程、魅力的なのですが、詳細に見ていくと頭痛くなります。弱いオツムにはチトしんどかったです(^^;考え違いもあるかも知れません。
しかし、春の渡り、秋の渡り共少ない記録ですが、台湾と結構行き来していることが示唆されたように感じました。
リアルタイムでやってみたいですが、現地に居ないといけないので微妙!風の予測も出来るので、いろいろ使えそうかな?